ご挨拶
Message
桐陰同窓会について
桐陰同窓会 会長
野城智也(84回)
2024年度(R6年度)総会時以降、76回渡辺博史先輩のあとを継いで、桐陰同窓会の会長を務めております84回の野城智也です。
附属在学中はあまりにもあたりまえで意識していませんでしたが、卒業後、様々な経験を通じて、附属がかけがいのない基盤を植え付けてくれたという思いを強くしてきました。附属の先生方や、部練や学校行事を支援指導下さった諸先輩が、如何に、寛容に、我慢強く、やんちゃな私たちを見守って下さったのか、私自身が教育者となってから推察できるようになり、赤面しつつ心中感謝することも、今に至るまでたびたびです。
卒業して外の世界に身を置いてみると、附属が、授業や、学校行事や、クラブ活動を通じて育んでくれた次のような資質は、決して当たり前でないことに気づかされます。
- 制約無く好奇心が沸き起こり連なっていく感受性
- 臆することのない自由な発想と行動力
- 豊かな表現力とコミュニケーションを楽しむ素養
ひとことでいえば、「力まない進取の気性」といいましょうか。附属の卒業生は、さりげなく「力まない進取の気性」を発揮して、実に多様な領域で、新たな世界を切り拓き、活躍してこられました。最近、イノベーションという言葉が溢れていて、随分、堅苦しく理屈っぽくイノベーションについて論じる方も少なくないのですが、私は、こうした気性を自然体で育成していくことこそが、全ての出発点であると思っています。
私は、同窓会の一つの意義は、卒業生同士が、附属がじっくり育んでくれた資質・気性をお互いに再認識しあって、各自が直面している必ずしも平坦ではない状況を乗り越えていくことを含め、会員の皆様が生きる力を奮い立たせる機会を提供することにあると考えています。
といっても、桐陰同窓会が上位下達で仕切るということではありません。附属には既に多くの附属コミュニティ組織があります。例えば、私の場合は、陸上競技部のOB・OG会である桐葉会、中村俊雄先生が36回の村上俊昌先輩のご協力のもとに催しておられた海浜生活のOB・OG会、桐陰建築会、84回合同クラス会に身をおき、人生を先輩同輩後輩とともに歩んで参りました。また、千葉桐陰会、ロンドン附属会、建設省桐陰会、桐和濤士会にも出席させていただき、大変お世話になりました。多方面で活動するさまざまな附属コミュニティが、必要に応じて連携する母体が桐陰同窓会であると認識しています。別個のご縁で繋がった様々なグループが活動しつつも、ゆるやかに繋がっていく、個別分散協調系ともいうべき組織様態が、附属らしいのでは、と思っています。
私は、同窓会のもう一つの意義は、附属の現役の生徒・先生の支援することにあると考えています。「力まない進取の気性」とそれを裏付ける資質を育成する教育を続けてきた附属という存在は、日本の近現代が生み出した奇跡ではないかと思います。単に、卒業生の一人としての感傷からではなく、いまの日本のために、そうした附属の教育が持続発展していって欲しいと切に願っています。
例えば、Chat GPTをはじめとする生成AIが急速に発展普及しています。コンピュータの登場が起こした革命的変化に匹敵するような大変革を引き起こす可能性もある一方で、大厄難をもたらすと懸念する人もおられます。生成AIの有益面を最大化し、不利益を極小化する要諦は、生成AIに対してどのような指示・命令文を提示し、「対話」していくかということにあります。生成AI→情報系の学部学科→理科系→国語不得意→良い指示・命令文が作れない といった袋小路にはいってしまわないためにも、前記の附属が育んできた資質は極めて重要です。この例のように、「力まない進取の気性」は、元気を失いかけているこの国で、いま大いに求められているところだと思います。
ただ、附属を取り巻く諸状況は、私たちに植え付けて下さった資質を育成しづらくするような諸要因が作用しはじめているようにも見え、私は懸念しています。
幸いにして、桐陰同窓会の会員の皆様の中には、「力まない進取の気性」をバネに、それぞれの世界で活躍されている方が数多いらっしゃいます。そうした先輩の存在は、現役の生徒・先生に、自信を提供するロールモデルとなるでありましょう。
桐陰同窓会としては、日本の近現代社会が生み出した奇跡を持続発展させていくという意味もこめて、現役の生徒・先生を応援して参りたいと考えています。COVIT-19による諸活動自粛もほぼ終了しましたので、渡邊前会長と同様に、桐陰会館を拠点として活用しながら、同窓生間のみならず現役との交流の機会をより多く作っていければと考えています。
同窓会の皆さまとともに考え、進んでいければと思っていますので、引き続き、ご理解とご支援をいただければ誠に幸いです。